9/30の講演会に引き続き、昨日時事懇談会を聞きに行きました。会場は、リーガロイヤルホテルです。
講師は、作家の堺屋太一氏。1960年4月に通商産業省入省。1975年の通産省在職中に、近未来の社会を描いた小説『油断!』で作家としてデビュー。ベビーブームで生まれた世代を『団塊世代』と名付けました。 1978年に通商産業省を43歳で退官し、作家活動に入りました。1998年、小渕内閣に民間人閣僚として経済企画庁長官に就任。 その多彩な経歴に裏打ちされた表題の講演を楽しみにしていました。 メモを元に概要をまとめます。 ●明治維新とは何か 幕末・太平洋戦争の敗戦、と日本はその都度新しい仕組を作り立ち上がってきた。 バブル崩壊後、日債銀を始め35行がつぶれ再編成をされた。そごうもつぶれた。その後、2ヶ月経って再生の兆しが出てきた。 私が経済企画庁に入ったとき日本の経済力は世界で6位まで下がり、再生のために荒療治を行い在職中の2年半で辞めるときには3位まで上昇。日経株価は12000円台から20800円台まで上がった。それ以後の10年間は日本経済は下り坂になり、3.11という大災害が起きた。これは日本が近代になってからの3度目の敗戦と位置づけられる。 第一の敗戦は、幕末。黒船によって身分制度が崩壊をした。「イヤイヤ開国」をした。幕府は外国人の排斥が根底にあり尊王攘夷であった。当時の錦絵では外国人は天狗の鼻のような描写をしている。 明治政府は次のことを成し遂げた。 ①「スキスキ開国」に変える。外国の文化を積極的に取り入れた。 ②版籍奉還を行い武士の身分を廃止した。この力となったのは、長州の奇兵隊である。 ③廃藩置県を行った。 ④新貨幣令(明治4年)。ペーパーマネーの流通。このことで、幕府の時代では年貢を3倍にしないと国の財政の立て直しができないという予測が、新政府になってからは資金調達ができ財政が豊かになって鉄道・郵便・軍艦の建設を行った。 ⑤教育の統制をおこなった。 以上5つが明治維新である。 この路線で大正初期までは、日本の国力は伸びて行った。しかし、太平洋戦争以後はじり貧になっていく。1923年の関東大震災で下り坂に転じるがそれでも大正デモクラシーは持ちこたえてはいた。が、1935年から軍部へ政権が移り敗戦となる。 ●敗戦以後の流れ 進駐軍は陸・海・内務の武力官僚を排除した。 戦後の復興が進み、1970年台の万博の頃には規格大量生産の時代に突入し、1980年台には国民総生産も上がり経済大国となった。 貧富の極端な差はなく犯罪も少ない天国を日本は作った。その後のバブル景気の崩壊後20年ええとこはない。 ●官僚が東京一極集中化を進めた 戦後官僚が推し進めたことは官僚が中央で規格を作りそれを地方に推し進めていくことだ。 ①業界本部を東京に置き全国の社長を東京へ集めて会議を招集する。私が通産省に入った頃はその仕組を作る真っ最中であった。 当時、なかなか大阪の繊維団体が東京に事務所を置かないので、当時課題だった日米通商交渉のテーブルにこのままだとつけないと圧力をかけて東京移転を図った。他に全国組織で地方にあった京都の工芸団体や名古屋の陶芸団体程度だった。また叙勲で、東京に本社を置かない社長には勲一等出さないなどがあった。このように本社機能を東京に集まった。 ②情報発信のキー局を東京に置かないと報道が出来ない制度にした。毎日放送も東京にキー局がないと放映ができない。 ③特殊な機能を持つ文化施設は東京に作らせた。このために関西歌舞伎もなくなった。地方には、多目的な施設しか建設しない。このような中途半端なホールでシンフォニーは正面の席以外は音響効果は良くない。 この三つを推し進めることで中央から地方に広げるこの仕組で戦後の経済成長を推し進めてきた。 教育の統制もそうで、その結果全国どこでも同じ授業内容が出来る。このような統一規格化で企業も人が使いやすくなった。人づくりが経済を押し上げた。しかし、この企画大量生産も今や世界の趨勢に合わなくなってきた。 ●知価革命 満足ができることが幸せという考えである。これは物欲を満たす客観性とは異なる主観的な考えである。地域と年代によって可変的、主観的な社会になっている。これを知価社会という。科学的なものから主観的なものへ移り人生観も変わってきた。 月給の高い所よりもおもしろいところへ人が流れる。この風潮の中、アメリカの大企業に優秀な人が集まらなくなっている。 おの人生観の変化は、学業・就職・経済・結婚へと影響を与えている。 物も欲しいときに買うということだ。その結果アメリカではおそろしい勢いでローン社会へと突入していった。先に購入して後で支払う。 ●アメリカの過ち アメリカは貿易赤字国になった。通貨は信用があってこそ流通する。レーガンはドルを貸し続けた。学者はドルの価値が下がると反対をしたが、レーガンは楽観的であたt。これは、レーガンミックスと言われる。 実はこの手法は、1250年のモンゴルが発行した当時の国際通貨で実施され破たんをしている。 しかし、レーガンは楽観的に同じことをやった。アメリカはドルの貸し出した投資先が次々と駄目になり2003年にはサブプライムローンに窮していく。 この結果、2008年のリーマンショックが起きた。それ以後、借り手は国しかなくなった。これも、なくなれば利息がゼロとなる。無利子になれば金の動きが止まる。 ●日本は旧態然としている 日本は規格大量生産のままで止まり新しい動きに対応できていない。 野田さんの財政政策では橋本内閣の増税政策の過ちと同じことになる。当時私たちは反対を唱えたが大蔵官僚は聞き入れず1997年のアジア通貨危機へと繋がった。 今回も同じ繰り返しでアメリカの破綻は3年後に日本を襲ってくる。 中国では、やがてルイス転換点がやってくる。これは日本のバブル崩壊と同じことが起きる。この時期に増税政策は良くない。 ●政府が今やるべきこと ①財務のデフレ政策をやめること。 この20年間名目でマイナスが続いている。まわりのものは皆安物ばかりだ。 上海で生産しているジーパンの輸出先では、100元のもはアメリカ、40元は中国、20元の縫い目の粗い安物は日本と別れていた。 日本の安物志向は続いている。日本向けの牛肉もある。 デフレは文化の発展や子供の教育には良くない。 ②成長政策を行うこと 保護政策から伸びる分野へ金と投資する。 そのためには縦割り行政をやめること。各省の役人は法人への権益を握って離さないのは自分の退職後のことしか考えないからだ。 ③高齢者が楽しく働ける文化をつくる 戦国時代の年齢と現代のものを換算すには次の式がある。 (昔の年齢)×1.2+3歳=(現代の年齢) これによれば、織田信長は現代では62歳。武田信玄は52歳。当時75歳の徳川家康は90歳を超える。 ところが、今は社会全体に高齢者が金を使う制度がない。寄付もできない。 高齢者がもっと楽しく金を使える環境や商品を用意すれば、金を使う。また職場環境もフルタイムではなく、週に数日勤務などにすれば働く人も増える。 アメリカでは個人の寄付金額が20兆円。日本は200億円で100分の1だ。 制度が硬直化しても官僚支配で縦割り行政が壁になっていて改革ができない。 根底には官僚こそが金の使い方を知っているという発想がある。 ●地方から中央を変える 規格大量生産時代の残渣を如何に減らすかが問われている。橋下徹さんはそのことを言っている。東京一極支配をあえて崩そうとしている。 先般あるLEDの会社が、新宿と大阪北区に同じシステムの街の照明の提供を申し出た。 新宿区長がすぐに出向き8月に受け入れを知らせてきた。大阪の方はスムーズに進まず受け入れるかどうかの検討会を来年の4月に持つということだった。ここまで硬直化は来ている。 幕末の改革も長州藩の奇兵隊から始まった。まず、どこかの地方で実施することからしないと始まらない。 ●全世界不況の中で リーマンショックから2011年はギリシャの経済危機になった。2014年ごろにはアジアを襲うだろう。 日本からさらなる企業の流出が進む。TVも自動車産業も消えていく。そして、官僚たちは成長産業を止めている。 この結果貧困化はますますひどくなる。 3.11は敗戦の始まりでガダルカナルの撤退あたりで3年後には敗戦だ。私の関心事は、いつ官僚と政府がこのことに気づくのかということだ。 今回の橋本さんの動きもこれから、中央の反発と干渉がより強く加わるだろう。 (会場からの質問に答えて) 円高が進んで良いことは何もない。 円安になればインフレが進む。エネルギー問題が大変になる。アメリカ天然ガスの供給の道があり、ロシアも代替えがある。 アラブ諸国の不安定要因は直接、日本へ影響を与える。円安と共にスタグフレーションになっていく。 銀行融資も若い人の起業へ投資されない。日本は、小さな発展途上国に落ちる。 阪神淡路大震災前は、神戸港は世界4位の貨物の取り扱いがあったが、今や37番目。釜山港の10分の1だ。これはことごとく官僚統制の結果である。 物価の上昇を抑え安物の氾濫を防ぐ。起業への融資をもっとすべきだろう。 そのためには、地方が脱官僚をしなくてはいけない。 東北復興庁の動きは腹立たしい。8か月経ってもまだ決まらない。阪神淡路大震災の時には2月には基本方針が決まっていた。 金はその地方に与えて自由に使わせればいいが、現実には中央の指示待ちで責任逃れをしている。 地方は、国のイメージにないものを発案して欲しい。 仙台は音楽の都、別のところは演劇に特化するなど。役割分担を提案して欲しい。行きつくところは道州制になるのではないか。 * * * 経済企画庁長官時代に、インパク(インターネット博覧会)を開催。 実は私の現職時代の学校で、インパクのパビリオンの一つインターネットノベルの県内のキー校になり、同氏が訪問をされました。話される印象は当時と変わっていません。 大臣の訪問ということで、事前の車の進入路の調査や当日の行動について細かいマニュアルがなされ大変だったことを思い出します。 2000年9月の画像から次の画面を紹介。▼
by okadatoshi
| 2011-10-25 16:34
| 講演会記録
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Comments(2)
昨晩 一度拝読させていただいたのですが、今朝もう一度読ませていただきました。
やはりokadatoshi様の講演会のブログは秀逸です。 これだけの内容をメモされ、まとめられたことに感謝です。 今は橋本「元」知事の発言、行動から目が離せないと思っていますが、広い見識を持った方の意見を聞く機会を得て、これからは新たな目線で 考えてみることができそうです。 震災以降、東京のホテルには 少し外国人が戻ったようですが、全く以前とは違い 活気のない様子を実感しています。 このブログを拝見すると、これから先、もっと切実な覚悟が必要になりそうですので、心しておこうと思います。 ありがとうございました。
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by
okadatoshi at 2011-10-26 08:05
shinmamaさま
前回は発表者がカラフルなパワーポイントを使って手順良く説明をし その画面の縮小版も会場で配布し、資料的には完璧な講演スタイル でしたが後で、文章を起こすのには苦労しました。 今回は、従来のメモ(今回はB6のメモ用紙で13枚の殴り書き) へ戻し講演内容の口調とその前後の発言で講師が強調したかった ことを再現できました。 聴き手がメモを取りやすい話し方、逆に聴く手側の聞き方などを 考えられさせられました。 Webであいまいな文言を検索すると詳しい内容が再確認できます。 講演を一度聞き、さらにもう一度まとめることで二度講演を聴いた 気持ちになります。加齢防止訓練です。 冗長な内容にコメントありがとうございました。
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