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逆境を吹き飛ばす江上"剛術"
昨晩は6月に引き続き時事懇談会を聴きました。

講師は、江上 剛氏(作家)。1954年1月7日生まれ。兵庫県出身
1977年早稲田大学政治経済学部政治学科卒業後、旧第一勧業銀行(現みずほ銀行)入行。梅田・芝支店の後、本部企画、人事関係(総括部、業務企画部、人事部、広報部、行内業務監査室)を経て、高田馬場、築地各支店長を経て2003年3月に退行。
97年第一勧銀総会屋事件に遭遇し、広報部次長として混乱収拾に尽力。その後のコンプライアンス体制に大きな役割を果たす。この事件を元にした映画「金融腐蝕列島」(原作:高杉良、主演:役所広司)のモデルとなる。
銀行員としての傍ら、2002年「非情銀行」で小説家デビュー(江上 剛氏blogのプロフィールから)
twitterでもアクティブに発言。▼
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●20、30年後の見通しができる経営者が評価される

最近、フルマラソンをやっている。紹介文に掲載されている私の写真はメタポになっている。次の機会には今の写真にしてください。

最近、中部電力の上越火力発電所の1号機に運転開始の取材で直江津へ行った。浜岡原子力発電所の停止に伴う電力供給の代替えがこれらの火力発電所で賄える方向性がついた。
伊勢湾台風で壊滅的な被害を受けた当時の中部電力の経営陣が日本海側に火力発電所設置に計画を建てたものだ。東海沖地震の心配もあり22年前のこの建設判断は凄いと思う。当時は、東京電力・関西電力ともにコスト削減で名経営者と言われていた。関電は、原子力発電へとシフトし電力の45%を原発に依存した。当時の経営の評価としては中部電力の方針はコスト面ではマイナス評価だったかもしれないがあえてそれを行った。
東京電力が原発を導入するときにアメリカのシステムをそのまま採用した。アメリカでの原発の被害でもっとも心配なのはハリケーンでその対策には地下に非常用電源を埋蔵することだった。東京電力は津波対策など考えずに地下に設置をした。
一方東北電力では原発の非常用電源をコストの高い高台へ二基移動を計画。今回の津波ではその内の1基の囲い部分が完成していて東海村への電源供給が確保できた。中部・東北の電力会社では「危機に対して対応策をとっているところはマスコミは報じていない。」と話している。
東京電力の今回の被害状況に対し他の電力会社は、「非常電源をたった一基それも地下に設置し、保安院も認めていた」と知ってびっくりしている。
経営者とは駅伝のランナーのようなもの。如何に会社の経営を次の世代につなぐのかが課せられている。駅伝では区間賞があるが、会社経営では区間賞はあり得ない。次のランナーへのタスキの渡し方は難しい。

●経営がおかしくなる7つのこと

私の40~50代は大変な時代だった。複数の経営に失敗した会社に遭遇した。
なぜ会社経営が行き詰るかというと次の7点が挙げられる。
①傲慢②私物③過信④排折⑤空虚⑥鈍感⑦執着

このプロセスでは最初の「傲慢」がもっとも大きい。
第一銀行当時合併に関わる中で戦後日本の黒幕とされる児玉 誉士夫との関係が絶ちきれず、また大蔵省は全体に言うことを聞いてくれるという傲慢が銀行側にはあった。
経営をやる上で傲慢になってはいけない。リーダーシップと傲慢とは異なる。
インドへスズキが進出を決意した例などは社内の反対や危惧を押し切って社長が決定。同社の現在のインドの軽自動車の興隆を得ている。
当時の第一銀行や東電の社長もリーダーシップがあるのではなく傲慢であった。
その差は"消費者に対して謙虚であるかどうか"にある。これはお客にも従業員に対する接し方にもいえること。

セブン&アイ・ホールディングスの伊藤雅俊氏は中国の四川に店を出すとき現地に派遣される日本人従業員に次の3つの約束をさせた。
①仕入れ先は20日〆で月末現金払い
②従業員への給料の遅配はしない
③消費者には安全・安心の商品を提供
ところが現地の人たちは「そんなことをしたら我々は商売ができない」と言った。
中国では如何に給与を払わずに首を切るかが会社が成功する秘訣。海外進出した日本の会社が成功しないのは現地での売掛金の回収ができないからだ。
ところが中国のサーズ発病の時に、伊藤ヨーカ堂は評価され、この時期に逆に営業成績が上がった。

●傲慢にならないために

傲慢にならないためには、数字をいかに信用するか-につきる。
JAL再建に入ったtきに日程表も出てこない、すべてどんぶり勘定だった。
一日のデータを数字で取り出すことで再建を始めた。稲盛氏の数字はごまかしが効かないという言葉で再建の意気込みが伝わる。
三菱地所がかかわった建設工事で有毒な水が出たという苦情に対して、当時の基準で裁判には勝てる違法性はない-記者会見で発言反発が来た。これも消費者を大切にしてないことで会社の経営危機へと繋がった。

会社は悪くなり始めると、社内にごますりが出て、トップに情報が入ってこなくなる。
大阪で債権回収で起きたこと。
相手が担当を目の前に突き刺して威嚇することがあった。その場合でも担当者、短刀を抜き相手に返し、債権を回収に努める。そういうやり取りの中でわずかずつでも取り換えした。その内、支社長の自宅に犬の死体が何者かに投げこまれることがあった。奥さんが怯え、担当支店での回収トラブルの嫌がらせとわかり、そこへ回収作業をやめるように指示がとんだ。これでは、回収で第一戦で頑張っている社員はやる気が失せてしまう。
こういう時に役に立たないのがエリート社員だ。エリートは判断力がなく信用ができない。女子行員の方が度胸が据わっていた。
会社にとって、社員は大阪城の石垣だ。隙間のない企画化されたエリートの石よりも、大小取り混ぜた接触面がいろいろある石の方が揺れに対応できる。大阪城のタイプの方が崩れない。銀行や旧陸軍の組織はもろいエリートぞろいの石垣だ。

●危機への対応

銀行内の会議で役員が「大蔵省の検査をごまかしたことを告白」したことがあった。
私は「すぐに記者会見をしましょう」と提案をした。この時の上部の反応は、「まだ詳細がわからないので時間をとる。」
しかし、やがては発表しないといけないときに、記者からはその事実を「いつ知ったのか、それまでに何をしたのか」を質問をされ、結局時間稼ぎと思われる。
会社の経営者は判断を一瞬で行う。そのことで、現場は緊張し再建の方向が目指せる。
松下幸之助も会社のガスコンロで事故が起きたときに、コンロの生産停止と購入者への広報を直ちに指示した例がある。
そのDNAを持っているパナソノックの赤字も復活するのではないか。

●ハイエナの原則

経営者は"嘘はつかない、逃げ出さないこと"。
腐肉にたかる専門家が必ずいる。彼らは何度もその味を確かめに来る。金は汚い所に集まる性質がある。あとドラキュラの原則がある。ドラキュラは太陽の光を当てると死ぬ。経営者は勇気を持って光を当てる。
さらに、オオカミ少年の法則がある。経営者はいつくりかわからない危機に備える。そのためには現場に入る。
その過程で危機意識を共有することで、従業員と一緒に会社の業績も立て直せる。

●技術には寿命がない

富士フィルムをモデルにこれから小説を書く。
戦前に日本の従軍の記録を撮るために大阪セルロイドはコダックに協力を要請したが断られ、1935年に富士フイルムを作った。しかし、2000年のピークを境にデジカメの普及と共に業績が悪化。
コダックには技術が無く倒産。
しかし富士フィルムは生き残った。残されて技術を再利用して化粧品製造という新しい分野を切り開いた。
事業には寿命があるが、技術には寿命が無い。
韓国は国内の中小企業を切り捨ててサムソンとLGしか国内になはない。国内に技術がない状態になっている。
大量生産の方式は中国には負けるが、今やこのようなアナログの技術を持っているのは日本だけだ。
このような技術は消費者の前から消えていくと衰退する。中間部品を作るだけには下請け国家になる。エンド商品を作ることを目指すべきだ。

●経営者は言葉を持つ

私は聖書の言葉が好きで、"狭き門より入れ、広き門は滅びに通ずる"という言葉が幼い時から脳裏にあった。この言葉で安易な判断をいさめた。
また母親から当時の五右衛門風呂に入るとき、"お湯は外に押すと自分に回ってきて暖かくなる"と言われた。
節目節目に自分のこのような言葉が思い出される。
松下の中村さんも先代の発言の中の言葉が出てきたのだろう。
自分が従業員に話した一言が何年後かに危機を救うDNAになるかも知れない。経営者はぜひとも自分の言葉を持ってほしい。
ダイヤモンドオンラインでコラムを執筆しています。従業員に話す機会があるときに使って下さい。

●孫子の兵法

最後に。
孫子は戦いに臨むにあたって『道・天・地・将・法』この5つがそろえば戦いには必ず勝てると説いた。
小沢さんは、反原発と消費税反対で"道"があり、その他も揃っていると判断し新党を作ったのではないか。

講演前の食事です。▼
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by okadatoshi | 2012-07-20 13:45 | 講演会記録 | Comments(0)
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