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変動する国際情勢と日本の課題
今月8日に引き続き、昨晩は時事懇談会を聴きに行きました。
講師は、村田晃嗣氏。同志社大学法学部長(2013年4月 同志社大学学長に就任)で、国際政治の分野で著作やTVで活躍されている方です。
普段は、メモ用紙10枚余りですが今回は15枚。かなり早口で内容も多岐にわたり、テンポの速い内容でした。人気の大学の講座だろうと思います。
いつものように、メモを起こし話のポイントをまとめてみます。▼
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いつでもどこでも、私はこのテーマで話しています。大体これで間に合います。(笑)

●歴史的に見た2012年2月の地点

今から20年前の1992年のクリスマスの挨拶でエリザベス女王は、「この年はアナス・ホリビリスだつた。(ひどい1年)」と話した。この年チャールズ皇太子の離婚問題があつた。
さて日本の昨年は、まさしくアナス・ホリビリスだつた。今年がアナス・エンペランス(希望の年)とすることができるのかどうかをテーマに今日はお話をしたい。

歴史的に見て今の日本がどのような地点にいるのかを見てみよう。
今から20年前の1991年の暮れにソ連が崩壊した。
この話を授業でしたら学生が「私はまだ生まれていません」といつた。そういう世代が育っている。学生にとっては、すでに歴史的な出来事の一つになつてしまつている。
このときアメリカがただひとつが世界の巨大国となり一極支配になると思われた。

その10年後2001年9月11日に同時多発テロが起きた。911というのは日本の警察の緊急番号110番と同じで、テロを仕掛けた側は警告の意味も含めてこの日を選んだのだろう。
ビルが崩壊するシーンを見た人は、今でも何処で誰とTVを見たのか鮮明に記憶しているはずだ。私は、当時アメリカに居た。

歴史を語るにはifは禁物で起った事実と向きあえといわれた。
あえてここで3つのifを捉えてみたい。
まず一つ目のif
もし2001年の911が起きなければ、この10年間でここまでアメリカの国力は低下しなかっただろう。
2003から2011年の間にイラク戦争で6000人のアメリカ将兵が死んだ。そして1兆ドルの戦費を使つた。東西ドイツを統合するのに6000億ドル必要であつたからいかに巨大な金額かがわかる。

このことがアメリカの財政赤字に連動し2008年9月15日にリーマンブラザーズが破たんする。911が起きなければこの915の金融危機も起きなかった。これが、二つ目のif

そして、915が起きなければ、中国のここまでの台頭はなかった。これが三つ目のif
この20年間の、9.11、9.15、3.11という3つの日付を経て、我々は2012年に立っている。

●今後の10年間でいかにアメリカを抱きしめるか

アメリカは、10年ぶりにアジア太平洋に帰ってくると宣言をした。このアメリカを日本がいかに抱きしめることができるかどうかに今後の日本はかかっている。
今話題になっているTPPは騒ぎすぎ。しっかりと中身を読んでいないで過剰反応をしている。アメリカの一般市民はにTPP問題を聞いてもほとんど関心も示さず内容も考えてはいない。

中国の動向を知ることが大切。
この国の経済成長率8%がいつまで続くのか。
人口動態から見れば長くは続かない。我が国で今起きていることは、時差を伴い周辺諸国で起きてくる。そういう意味での「先進」国といえる。韓国も現在深刻だし、中国は2015年には少子化の影響を受ける。
今日の日本を高齢化社会というが、高齢化というのは65歳以上が7%を超えることをいうのであって、今の日本は「化」を抜いた高齢社会になっている。
中国は規模は10倍、早さは3倍で高齢化と少子化が同時進行をする。中国は30年前に一人っ子政策を取った。
一人の子供が夫婦の両親を含め6人の大人を養うことになる。
今の8%の経済成長は続かない。
このような中国と接していて、日本は戦略的には10年間をアメリカをつなぎとめることだ。
この間に、イラン戦争などを起こし兵力をそちらに割くようなことはさせない方がいい。

●阪神淡路大震災と東日本大震災を比べる

3.11を復興させるには相当のエネルギーがいる。
17年目の阪神淡路大震災ではザックリと10兆円の復旧資金が必要であった。自衛隊の派遣はピーク時に2万人。
東日本では10万7000人の自衛隊が派遣され、これは5倍の人数だ。
犠牲者は2万人いたがその内の9000人のご遺体を自衛隊は収容した。収容作業では自衛隊はポケットがパンパンになる赤い紐と線香を入れて見つけるたびに紐をつけた。ブロックごとに印をつけて、その赤い紐がたなびくような凄惨な状態だった。自衛隊は当時からまた公式文書でも、「ご遺体」という名称を使っている。
アメリカ軍も1万8000人を派遣している。これは、阪神淡路大震災の自衛隊員の数にほぼ匹敵する。
これだけ自国の兵士を緊急時に派遣をしてくれる友好国はアメリカしかいない。
アメリカは自国の国益のために日本を援助したという人がいるが、それは当たり前のこと。アメリカと我が国の国益が一致させるためにこそ外交はある。

私がアメリカに友好的な発言をしすぎると、右寄りの人は私を「アメリカのポチ」という。
そして自分たちを保守派と言っている。はたしてそうだろうか。本来の保守派現状を維持し大きな変化を望まない人たちのことをいう。
「核兵器で武装せよ」というような過激な手段で現状の変革を言うのは、右翼か左翼の発想だ。
アメリカとの信頼関係が大切という私に対して、アメリカを批判するなら、私にではなくアメリカに行って当事者を論破すべきだ。自分が安全な場所にいてキャンキャン言っているだけで、私がポチなら、そういう人たちは「座敷犬」だろう。
今回の大震災で実に163の国々が援助を申し出てくれた。
このことは、戦後66年の我が国歩んだ道が大筋では間違っていなかったこといえる。
戦後の日本の歴史を自虐史観というひとがいるが、物事には両面を評価すべきだ。

復旧と復興は大きく違う。復旧はもとに戻す。復興は前よりももっとよくすることをいう。
阪神大震災の時には、後藤田ドクトリンに縛られた。
当時政府は、復興には焼け太りを防ぐ意図もあって国の金をつかわなった。それは自前で地方自治体と民間でやれということだ。神戸港の改修では水深12mを、大型タンカーが入れるように上海やプサン港のように水深15mを希望したが政府は12mしか認めなかった。そして今や神戸港は以前は世界第三位の貨物扱い量と言われたが、今や見る影もない。
今回の東日本では「復興」をしなければならない。

●世界的に選挙が続く2012年

野田内閣の消費税アップは避けられない。
1947年に始まる団塊の世代が2012年には65歳になる1年目だ。
2022年には今度は後期高齢者に移行し途方もない税負担が必要。
今若者の間に「弱肉老食」という漫画が読まれている。
現在、日本には1300兆円の預貯金があるといわれるが、やがて若い人が親たちの遺産を引き継いだ時に親が住んでいた地方には住まない。都会から動かないし、それらの金は都心の銀行に移す。500兆円が向こう10年間で相続の対象になる。
中央と地方の格差がさらに広がるだろう。

予算案、消費税関連法案の3月と6月が続き、4月の小沢判決の結果次第では4月政局があるだろう。
また9月には、民主・自民の総裁選挙もある。2012年はなかなか落ち着かない。
外国では、1月には台湾総統選挙があり、これから3月プーチン、4月はフランスのサルコジ、7月にはメキシコ、9月には中国、11月にはアメリカ、12月には韓国とそれぞれの国のトップの選挙が続く。この経済事情が低迷する中では、現職への不満が高まり与党が不利になる。
民主党は中学校の学級崩壊。自民党は老人支配の町内会だ。
一国の政権や政策で経済を立て直すことのできない時代になり、国民の方もフラストレーションが溜まってくる。

アメリカでは、二期目の現職が66%の確率で有利になっている。
ここにきてアメリカの失業率に改善の兆しが見える。ロムニーとオバマが対決した場合には、ロムニーのモルモン教はそうマイナス材料にはならないだろう。それより資産160億と言われる彼の個人資産が足を引っ張る。僅差でオバマが勝つのではないか。

●希望が持てる社会

冒頭に希望について触れた。
アメリカではトップ1%が金融資産の75%を押さえる格差社会になっている。
大卒の生涯賃金は、日本では3億円、高卒では2.6億円、中卒では2.2億円と言われている。
アメリカでは大卒では236万ドル(日本円で3億円)、高卒になると130万ドルと少なくなっている。アメリカのこの富の格差は、希望の格差でもある。昔のアメリカではブルーカラーの子供でも大学にやれたが今はできない社会になっている。
希望とは何か?
宝くじや立身出世は「欲望」。一人の人間の力で経済を立て直すのは「願望」。
ただ待って春を待つのは待望(あるいは絶望)。

希望という言葉から受けるイメージには次の3つがある。
①自分のことだけではだめで公共性がある。
②実現可能性がなければならない。
③当事者意識があり、準備と努力がいる。

今年が希望の年になるには③にかかっている。我々が当事者になることである。
これはリーダシップと互換性のある言葉である。
よく聞く言葉に
・リーダーの不在
・外交に戦略がない
がある。話がそこで終わってしまう。
その先に行けず思考停止の合図になってしまっている。

●リーダーはフォロワーが育てる

リーダーとは何か定義しにくいが、リーダーだけでは存在しえないということはいえる。
フォーローする人がいなければリーダーは存在しない。
教師と生徒、夫と妻のようにセットで存在する「対の言葉」なのだ。
鳩山さんにも菅さんにもフォロワーがいなかった。

我々自身の質の向上が必要で、そのためには次の4点がある。
①国民意識と市民意識のバランスが必要。国民意識の勝谷氏も、市民意識だけの田島さんも極端。
②多様性を確保する。水戸黄門はワンパターンだった。今は答えがわからない時代。
③感受性を維持する。相手の価値観、コンセプトを考える。領土問題でも相手国がなぜそう考えるのか、文化の違いを知る。
④忍耐力を持つ。世論調査に振り回されて次々に意見を変えるようではだめでいつしか待てない人間になってしまっている。

①~④を意識した良きフロアーになることで、「希望」があるのではないか。
by okadatoshi | 2012-02-14 22:27 | 講演会記録 | Comments(2)
Commented by kazewokiru at 2012-02-14 22:51
okadatoshi 様
国家観、宗教観の違いによって歴史は過去から未来へと刻まれて行きます。
20世紀から21世紀をまたいで生きている私達にも、それ相応の歴史観があります。
最近は、50年後の日本を憂う報道をよく見聞きします。
私達の子供やその子供(孫)に今の現実を丸投げだけはしたくないのが親心。
Commented by okadatoshi at 2012-02-15 06:48
kazewokiruさん
あまりに毎日鮮度の高い刺激的な事象の流れる中で
人々は驚きそして次の波が来ると目の前の問題を
すぐに忘れて、新しい波乗りで飛び上がりその繰り返し。

ワイドショウなどのTVや、インターネットを遮断して
何もないところで、自分を見つける時間と空間も
今の現代人には必要と思うこのごろ。
最初は、禁断状態になるでしょうけど。
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